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【村上海賊の娘】(ネタバレ回)戦国を通して今後の生き様を考える。 [小説]

今回はネタバレ回&長文&決意表明回です。強気な自信が揺らいでいた時期に、この小説と出会い自分の内側と会話することができました。遊び心はフィクションから。創作された物語の人物の影響を受けて、どう生きていくかを考えることも、時には大切なことだと思います。色んな世界に浸って、冒険して、成長する。楽しいですね。

今回はネタバレ回なので、この本を今後読むつもりの人はここでご退出ください。

66回目の記事は、本屋大賞受賞作の長編小説「村上海賊の娘」について。
・「村上海賊の娘(上下巻 or 文庫本で1~4巻)」2013年10月20日発売 【小説】

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全部で約1000ページになる歴史長編であり、1576年に織田信長側の水軍と毛利家側の水軍が戦う「木津川合戦」が舞台となっています。ネタバレ回なので、背景はこのぐらいでガンガン感想を書いていきます。
合戦自体は後半になってから描かれるので、物凄く長い時間をかけてその戦までの描写が展開されていきます。主人公の景以外はほぼ史実に基づいており、それに逸脱した行動も起こさないとても丁寧な歴史小説でした。
最初は登場人物が多すぎるし、そんな詳しく説明しなくていいから戦をしてくれとか考えていましたが、はい、反省します。この長編は合戦までを丁寧に紡いでいるからこそ登場人物全員に愛着が湧き、誰かしこも応援したくなるほど熱中するのです。

まずはみんな大好き小早川隆景さん。結局上杉謙信を待ち続けるだけの役でしたが、戦国での賢者たちのやり取りに説得感を持たせてくれ、能島村上の当主村上武吉との精神でのやり取りは痛快でした。この2人と織田が絶対的天才として存在するからこそ、理詰めで自家の存続を第一に考えるほとんどの男の登場人物の行動に納得できたのだと思います。

序盤は主人公村上景と弟の景親が、いい感じの兄弟として物語が始まります。戦に憧れやキラキラした何かを期待していたどことなく女の子の景は、天王寺合戦での命のやり取りで自家の存続とは何なのか、戦とは何なのかを打ちのめされながらも学びます。
全体的に心が成長しきっている登場人物しか出てこないので、この2人が読者に近い形で物語の中で成長していきます。この時、七五三兵衛に失望されたやり取りが、後の船上での交渉に使う材料になってくる展開は震えました。決してスマートではない景の生き方を、自分自身で把握しながら利用する様はさすがでした。

天王寺合戦ではやはり七五三兵衛と義清の、少年マンガらしい友情物語が目玉でした。ただただ格好いい。本願寺なんてここで潰れてしまえばいいのにと思ってしまいました。本番で村上海賊が戦う相手をここでかなり丁寧に紡いだからこそ、あの最高に興奮する木津川合戦になったのでしょう。ラスボスとしてふさわしいぐらいの怪物で、性格も大好きでした七五三兵衛。

戦は自分には向いていないとふさぎ込む主人公の景は、結局自分の中にある純粋なこうしたいという気持ちで単身、兄たちと合流しにいきます。誰もが自家の存続だけを考え、理屈だけで物事を考え、その結果として戦わないという選択をし続けていた男たち。自分は彼らと同じ側の人間だろうなと感じます。自らの損得を冷静に見定め、心のままだけでは行動は起こさない。それは今でも正しいと思います。でも、だからこそ景のような存在が眩しく見えるのかもしれません。

後半はもう何百ページ使うのだよってくらい戦がガッツリ描かれていきます。この時点で、村上家の元吉や景親、来島村上の吉継に因島村上の吉充、乃美宗勝に児玉就忠もそれぞれかなり好きになっていたので、どの見せ場も物凄く面白かったです。対する七五三兵衛は最強すぎるくらい好きなので、もう本当に手に汗握る戦いです。
好きな戦シーンをいくつか。
兄の元吉と弟の景親の船に、七五三兵衛の船が突撃するシーン。勤勉な元吉さんは潮の満潮を計算して海すらも味方にします。深夜0時を超えると月の引力関係で潮の満ち干が切り替わるというアレです。そんな知識なんて今まで人生で使ったことがなかったですけど、そうか海戦で使うのか。海賊の戦いって海を知り尽くしていて凄い。
海賊らしさといえば、景と孫一が小舟で戦をかけるときに、2つの大船で七五三兵衛が縄を用いて小舟集を一網打尽にするところ。ただただ乗り上げて切りかかるだけが海賊だと思っていたので、みんな海を知り尽くし工夫して戦うのはやっぱりプロだなーと感動しました。

義清が泉州海賊を説得して助太刀に来るシーンは、こうなるとは分かっていたけど胸が熱くなる展開でした。そんな義清の動きを感づきつつ、戦で優男のイメージを一気に覆してきた村上吉充はかなり好きなキャラでした。この2人の戦、及び村上家の船を傾けさせて戦う王道戦法、そして義清の最期。サブキャラとは思えないほどそれぞれキャラが立っていて、目が離せないほどの戦でした。因みに、卑怯者の兄弟のあの2人も結構好きでした。一番合理的な生き方をしていて。

そして主人公の景にはしっかり見せ場が用意されています。序盤に一人で物語を掻っ攫っていき、失望していた七五三兵衛を再び惚れさせるだけの面白い(おもしゃい)女として帰ってきました。やっぱりその辺のザコ敵では相手になりませんね。しかしその辺のザコ敵の泉州海賊もかなり良い性格しています。
ラストはやはり景と七五三兵衛の一騎打ちです。ここまでの弟景親の踏ん張りも忘れてはいけません。戦況が刻々と変わる中で、大将として堂々と動きまくった七五三兵衛には拍手しか送れません。どいつもこいつもカッコよく散りやがってこの野郎。

最後には児玉就忠も好きになっていたので、そのまま嫁いでしまえよって応援していました。しかし主人公の景だけは家系図に「女」と記されていただけの歴史には残らなかった人物、景というフィクションの人物が史実上の児玉就忠とは結ばれなかったのだとすると残念です。読み終わる頃には、それほど景のことが好きになっていました。

この本を読んでいる頃、現実世界での私は大きな心の病と直面し、自分がかなり行き辛い性格と心身を持っていることに気付きました。ある程度のことは満足しながら我慢し、多くは求めすぎず、手の届く範囲での幸せを掴む人生を送ることは無理だと悟ったのです。心の底から拒絶している閉鎖感や閉塞感は、自分が思っている以上に重い病のようなもので、これに目をつむって生きていくことは難しいようでした。
景も七五三兵衛も義清も村上海賊たちも、理屈で考え打算的に行動すればあのような戦にはなりませんでした。でも本能がそれを許さなかったのです。それぞれが心の中に持つ大切な純粋な何かに突き動かされて、命を賭けた。それらは立派で格好いい物語でした。
史実に徹底的に基づいていようと、この物語はあくまでフィクションです。現実の私たちの世界での生き方とは遠いものでしょう。でもそこから何かを感じることはできる。その生き様に励まされることはできる。
七五三兵衛に「面白い(おもしゃい)奴だ!」と言われるような人生を送るために、自分自身の性格や本能としっかり向き合い、普通の生き方をするためには必要のない努力もたくさんして、景のように気持ちに純粋で自由なこれからの未来を本気で目指していこうと思いました。人よりも求める幸せの基準が高くなってしまったからこそ、そのために知らなければいけないこと、行動しなければいけないこと、努力し続けなければいけないこと、全部ひっくるめて戦ってやろうと思います。今回は決意表明回です。
私もこの世界で一生戦い続けながら死にましょう。そんな風に思わせてくれた、長編傑作でした。
それではまた来週!
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